からかいも仕事のうち

 コーディネート研修で、会社の重役が「センスは女性の方があるんだぞ。派手になっちゃうけどね笑」と言う発言があった。これは、新入社員である女性たちに「女性ならではの視点」を期待(森山、2023)する発言だ。ちょうど研修のころ「女性ならではの感性」という言葉が新聞やニュースなどのメディアで大きく非難されていた。その地域や学校、会社など、小さなコミュニティで普通とされることが、一歩外に出たらとんでもなく時代錯誤な偏った考えであることはよくあるのだ(長田、2019)。

president.jp

 

diamond.jp

 この問題発言は、会議室という空間で、ある会社に入った新入社員たちに重役たちという指導者によってされた。その会話相手といっしょのからかいのサークル(発言の意味が奪われてしまうサークル)に属していた人は、「あなたも楽しそうにしてたでしょ?どうして急に怒ってるの?」というふうな証言をすることになり、それに屈しつつどうにか切り抜けるか、それでもなお抗議することで「理不尽な人間」「急に怒り出す人」といった評価を甘んじて受けるしかなくなる(三木、2023)。そのような仕組みで、うら若い者もそのサークルの一員として上記の時代錯誤を身につけることが、適応へのマナーになる。

 

【引用・参考】

三木那由他(2023). 言葉の風景、哲学のレンズ 講談社

森山至貴(2023). 10代から知っておきたい女性を閉じこめる「ずるい言葉」WAVE出版

長田杏奈(2019). 美容は自尊心の筋トレ Pヴァイン