しっちゃかめっちゃかのパッケージ化

 このアルバムがめちゃくちゃ素敵だと、常々思う。綺麗な傑作じゃないところ、そもそもそれを目指していないところが、彼らのアルバムで、世の中のあらゆるアルバムのなかで、ダントツ好きだ。名盤志向じゃなく、何年も前に作ってあった最近の曲が入り乱れて、アルバム全体にも曲単体にも整合性がない。それを編曲や曲間で辻褄を合わせる。

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「なんで名盤を作ってんのかな?」と思って。

自分たちのダメなとことか、よくわからないとことか、その、「なんかこう形にならなかったな、色んなもの。」というのが、そこにはなかったのね。でもそれも含めて自分たちだし。

「ボロボロで、ダメダメで、よくわかんなくてもいいんじゃないかな」っていうところでなんか一つ作ってみたいなっていう

わざともうグチャグチャにして、「ひきだし開けたらグチャグチャだったな」みたいなさ。それでもいいんじゃないかなと思って。それの何がダメなのっていうところをなんかやってみたかったっていうのがある。これを正直、「すごく素晴らしい作品ができました」という気持ちも全然ないし、「なんなんだろう」と自分たちでも思ってる

整合性のある作品として名作かと言われると全然そんなことなくて、もうある意味寄せ集めですってところはあるんだけど、躊躇せずに好きなことやったなあって感じはする

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 ビートルズが混沌としたサイケデリアを経て瞑想して、大量の楽曲をめちゃくちゃに収録したホワイト・アルバム。大量のデモテープやトランペット・フレーズをなんとか編集&ミックスして完成したマイルス・デイヴィスのアルバム群。大量の筆跡をわざわざ上から塗り潰して描いた絵画。曽我部恵一自身のソロアルバム「超越的漫画」。そういう面白さがある。

 背景にある大量さが伝わってきて、どう捉えたらいいのかわからないし、(本人的にも)良さがどうこうじゃない。かといって、グロやナンセンスのような、露悪的な表現でもない。ただただ、何かを感じようがない。「澱」をまとめたものであり、自分でも全然わからない。自分でも把握できない、かといって混沌を意識したものでもない。ただ良さが自分でもわからないものをただパッケージングする。

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 把握しようがない、「これはなんなんだろう」という雑多さを推し進める。とにかく無作為。無作為にしようという作為もない(「超越的漫画」「まぶしい」のときのように)。

雑多で、ゴチャゴチャしていてよくわからない。それをさらに推し進めた

ファンにはそんなに届いてない気もする。ファンもちゃんと把握できてないと思うし、僕らもよくわかっていない。『DANCE TO YOU』以降の混沌のなかにいることの記録って感じ

 

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 陰(隠したかった/普段は隠しているもう一方)が不随意的に出てしまっているものは立体的だ。あるいは、影が表へと不意に気配を漂わせるとき、その対象は立体的だ。表象の奥・裏が少し前景化するとき、「香り」のようなものが出てきて、それに惹かれる。