まぶしい/曽我部恵一

 曽我部恵一「まぶしい」。よくわからない曲が雑多に入ってる。大量さと生活感を感じる。かといって、それをことさらに掲げているわけでもない。ただたんたんと、雑多。そのことがアルバムのテーマとしてより前景化してた前作「超越的漫画」に対して、そこが異なる。そんな聴感がする。

www.roserecordsshop.com

www.roserecordsshop.com

 できてくるものを、できてしまうまま、できあがりにしてしまう。自分でもわからないまま、聴いた人もわからないまま。かといって突き放すわけでもない。サニーデイ・サービス「THE CITY」にある意味近い。でも、それに比べてソロっぽさがある(サニーデイ・サービスのそのアルバムも、ほぼ1人で作っていたのに)。より、誰かを想定せずに、無意識的に「そのまま」が徹底されたのかもしれない。実際に共同作業していなくても、2人が脳裏にいるといないでは、クリエイションが全然変わるのだと思う。

一連の曲が何を意味してるのか、何ができようとしているのかっていうのが自分でもわからないまま、曲がどんどんできていった。

実生活の中でさ、サビまでいかないことっていっぱいあるじゃない。瞬間的な感覚で終わっちゃうことっていうのが。それはそのままにしておきたい。

natalie.mu

 「このようにするのが、よりラディカルだから」というスタンスをとってるわけでもないのが、前作と異なるように思う。これが真にロックということでもなく、ただ普通に。インタビューでも、あくまで「ポップ」だと語られてる。

 日々直面する外的なもろもろや、つい湧き上がってくる自分の中の想いに対して、良い悪い(正しい正しくない)で価値づけて行動をしようとしても、その基準を超えてくる何かがつねにある。無意識には、どんなに抗おうとしても抗えない。太陽の前では自分の全部を露わにするしかないみたいに。素敵なふるまい・表現をしてたいという気持ちと、倫理と異なる軸の「不気味なもの」が並走する。どちらもずっとある。従うしかない。このアルバムは、「碧落ーへきらくー」という曲をオミットしないことこそが良い。前作「超越的漫画」で「6月の歌」が収録されてたということが、このアルバムではより鮮明にされている。その鮮明さが、まさにまぶしい。…いらないかもしれないな、この結びのフレーズ。

 

youtu.be