【読書会用メモ】女ぎらいーニッポンのミソジニーー/上野千鶴子

ミソジニー(女性嫌悪・女性蔑視・女ぎらい)の男には、女好きが多い

…女好きのミソジニーの男は娼婦好き(娼婦を人間として愛するのではなく、カネで買った女を自由に玩び、ときには本人の自制に反してまで自らすすんで従わせることが好き)が多い

→自分を性的に男だと証明しなければならないそのたびに、女というおぞましい・汚らわしい・理解を超えた生き物にその欲望の充足を依存せざるをえないことに対する、怨嗟と怒り

ミソジニーは、女にとっては自己嫌悪

・苦界にある女への道場や共感は、厳然と引かれた階級とジェンダーの境界線を舞台装置として、絶対安全圏にいる者の自己満足のための資源となる

・聖女と崇められようが売女と蔑まれようが、同じ盾の両面

・男は今も昔も、現実の女から逃走してヴァーチャルな女に萌える

フェティシズム:換喩的な関係によって欲望の対象が置き換えられる、記号的な操作

 

・男の値打ちは、男同士の世界での覇権ゲームで決まる

・女の世界の覇権ゲームは女の世界では完結しない…必ず男の評価が入って女同士を分断する

ホモソーシャル:性的であることを抑圧した男同士の絆

・貫かれること(モノにされること、性的客体となること)を女性化されるとも言う

…男性が最も怖れたのは、性的主体化の位置から転落することであった

ホモソーシャルな連帯:性的主体(と認め合った者)同士の連帯であり、男になり損ねた男と女を排除して差別することで成り立っている

・猥談:女性を性的客体として貶め、言語的な陵辱の対象として共有する儀礼トーク

 

・他者化:相手を理解不能な存在(異人・異物・異教徒)としてわれわれから放逐する様式

・男は、「自分は女のような男ではない」と証明し続けなければならない

・性の二重基準:男向けの性道徳と女向けの性道徳が違う

…男は色好みであることが価値であるとされるが、女は性的に無知で無垢であることがよしとされる

・少女:性的に成熟した年齢に達しているにもかかわらず、その性的使用が禁止された身体の持ち主

 

・弱者男性が最下位に来る序列からは、最弱者女性が排除されている
・家事負担がない分だけ弱者女性より有利かもしれないことにも気づかない
…弱者男性論者は、女性の現状に理解も関心もない
・売買春は、コミュニケーションの過程を金銭を媒介に一気に短縮する強姦の一種
・加藤の頭の中では、女とは男の外見に惹きつけられる単純な生き物だと見なされているようだ
・彼女がいることが全てのマイナスから自分を救ってくれる逆転必勝の切り札だと考える彼の思考は完全に倒錯している
・恋愛市場から降りる特権すら彼らは持っている
ホモソーシャリティ:男は女に選ばれることではなく、男同士の集団のなかでメンバーとして認められることでことで初めて男になる
…加入資格は「彼女がいる=女をひとり所有する(文字通りモノにする)」こと
・男にとって最大の女の役割…自尊心のお守り役
・友人関係:利害や役割を伴わず、直接的な利益を得ることが期待できない
…維持するのが難しい
 
少年愛を児童性虐待と呼び変えたらどうなるだろうか
・性は欲望の言語で愛は関係の言語であり、性が愛を随伴することもあればそうでないこともある…性愛という紛らわしい言葉
・性欲:個人の内部で完結する大脳内の現象(何が性欲の装置となるかは、人や文化で違う)
・性行為:欲望が行動化したもの
…その行動には他者(身体)を必要とする場合とそうでない場合がある
マスターベーションは、他人を相手にする性交にとってかわるための準備でもなければ、不完全な代替物でもない
マスターベーション(パートナーのないセックス)は、自己身体との合意のいらない性行為
・シュルツは、「私はただの便利な道具ではなかった」と信じるために、自分を性虐待した男性が持っていた動機を理解しようとした
・「加害者にせめて自分が相手を傷つけていることを自覚してほしい」と被害者は望むが、加害者は被害者の受けた傷をつねに過小評価しようとする
・自分の欲望のために、同意を得ずに(すむ)無力な他者の身体を利用し、それに執着し、依存し、相手をコントロールし続けようとし、その相手から自尊感情や他者への信頼や自己統制感などを奪い、あまつさえ相手がそれを望んでいると信じたがり、誘惑車に仕立てるという関係
…強姦やセクハラやDVに当てはまるのみならず、そのまま異性愛の男女の関係に当てはまる
・チャイルドポルノにおいて子供は、どんな意味を持つかを自覚することなしに性的な露出を迫られる
…子供の身体を性的な道具にすることは犯罪と見なすべき
・チャイルドポルノサイトでは
…本人が無自覚なまま映像が流出している
…親や教師など保護者の立場にある者が子供を利用することさえある
…性的な映像に価値があると気づいた子供たちが、すすんで自らを性的客体化した映像が流出している
・女のようではないことを証明するには、女を所有することで女の支配者の位置に立つ必要がある
・「男である」という自らの性的主体性を侵される危険を少しも感じることなく他者を性的にコントロールするために、最もバリアの低い、無力で抵抗しない相手を選ぶ
 
・末っ子長男の激減…「もうひとがんばり」が経済的状況からもはや効かなくなった
・家父長制:ミソジニーを核として組み込んだ社会
 
・「女は関係を求め、男は所有を求める」
・暴力で女を所有しようとするのは、下の下の策である
・暴力で獲得され維持された権力は、身体的能力の低下とともに奪われる
・金さえあれば暴力も権力も買える
・暴力と権力と金力…ホモソーシャルにおける序列を決定づける資源
・男性社会の価値を内面化している女は、自らすすんで男の序列に適応する
…男の序列を通じて財の分配に預かることを期待するから
・性による支配は、支配を受ける側の自発的な服従をもたらす支配
…恐怖ではなく快楽による支配こそ、究極の支配
→自発的な従属こそ、支配のコストを削減し、支配を安定化させる
・江戸期の春画:「こうすれば女は歓ぶもの」という男のファンタジーが投影されている
・「男ってのは、結局、女性の快楽に汗を流して奉仕するだけの存在なんだよ」
…逆説的な支配が含意されている
→女の快楽を完全に自分の男根のコントロールのもとに置き、女自身をすすんで従属させて、慮外の境に導く
・ポルノの定石として、犯される相手がそれを歓迎しているという条件は必須
・女のマスターベーションシーンが男に刺激を与えるのは、その不在の男根の位置に自らの男性器を象徴的に代入できるから
・女性同性愛と見える構図では、不在の男根を涙ぐましい模型によってまで求める女たちの痴態が、男の欲望をそそる
・男根崇拝
…勃起不全に対する男性の恐怖
…ピル解禁より驚異的なスピードで認可された、バイアグラの使用
 
・母:ミソジニーの男が侮蔑の対象にできない女…自分自身の出自を汚す行為だから
・被害者に原因を転嫁するのは加害者の定石
・子供たち(わけても息子)に「お父さんのようになるんじゃないよ」とこぼし続ける、いらだつ母・愚痴る母
・その母を理不尽に支配する父
 
・「メランコリーは、愛した対象を忘れ去る操作である」
・控え目さや奥ゆかしさは、メランコリーと似ている
・母は抑圧者でありながら犠牲者
・母が母でなくなって初めて佐野は母と和解する
…呆けた母の口から「ごめんなさいありがとう」が出てきたとき、「私を苦しめていた自責の念から解放された」「私はゆるされた」
→「私は母をゆるした」とは書かない自責感の強さ
・「わたしはあなたではない」と、母も娘も違いに相手に向かって告げることからしかはじまらない
 
・虐待を受ける側は、自分を卑下し、無力感に苛まれ、自信も力も奪われる
…精神的虐待というものが含まれることは、「ずっと虐待を受け続けてきたのね」という目から鱗の経験をもたらす
ピグマリオンコンプレックス:未熟で未完成な女性を自分の好みに仕立て上げ、それに対して愛着を抱く性向